テーマ 41DNAはヒトゲノムを理解するための始まりにすぎません

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マリオ・カペッキが、プロテオミクス(タンパク質の構造と機能の大規模研究)を説明します。ブライアン・サウアーが、遺伝子ノックアウトを説明します。

こんにちは。私はマリオ•カペッキです。私はタンパク質の機能を解析するために使われる方法を考え出しました。この方法はヒトゲノムプロジェクトによって発見された、何万もの遺伝子の意味を理解することの手助けとなるでしょう。 [遺伝子][タンパク質] タンパク質の構造や機能の大規模研究を行う、この新しい分野を“プロテオミクス”といいます。これは結果的にビードルとテータムの“1遺伝子1タンパク質”実験を大規模なスケールまで拡大することになりました。 [ゲノム][プロテオーム] ヒトのタンパク質の機能を研究するとりわけ良い方法は、マウスにおける類似のタンパク質を巧みに扱うことです。私たちの染色体はその構造がよく似ています… [ヒト][7番染色体][マウス] …そして、マウスの遺伝子はヒトの遺伝子と約99%同一であると推定されています。 [ヒト][マウス][SP4遺伝子の配列] 1980年代中頃に、生物学者はマウスの胚性幹細胞(ES細胞)に新しい遺伝子を挿入し始めました。ES細胞は、発生中の胚盤胞の内部細胞塊由来で、細菌や酵母のように培養すると増殖します。とはいえ、それらは正常な胚性組織のように発生し、分化する能力を残しています。 導入される遺伝子(トランスジーン)を持ったプラスミドは、制限酵素で一度切断されます。そして直鎖状のプラスミドが培養液に加えられます。 電流の短いパルスにさらすと、約10%の細胞が新しい遺伝子を取り込みます。このDNAを取り込む方法はエレクトロポレーションと呼ばれています。 そして、胚盤胞は妊娠中のマウスから集められます。多くのエレクトロポレーションされたES細胞は宿主の胚盤胞に注入されます。 [妊娠中のマウス] [胚盤胞] そして、キメラの胚盤胞は代理母に挿入され、遺伝子導入されたES細胞は宿主の胚盤胞とともに発生します。 [代理母] キメラの子は実際には4匹の親から由来していて、見た目にその混合された遺伝形質を示します。ES細胞は通常、交配した黒色の親に由来し、胚盤胞は交配した2匹のアルビノ(白色)の親から由来しています。したがって、トランスジェニックの子は黒色と白色のパッチ状態になっています。 [胚][ホスト細胞][ES細胞] [キメラマウス] 最初は、導入遺伝子が宿主のゲノムのどこに組み入れられたか推定する方法はありませんでした。いくつかの事例では、遺伝子と遺伝子の間の領域に害を及ぼさないように挿入されていたかもしれません。 別の事例では、機能的な遺伝子を破壊するかもしれません。 まれに、似ている配列と組換えを起こします。 私の方法では、相同組換えによって、ある染色体の特定の位置に挿入遺伝子を正確に”狙う”(挿入する)ことができます。 初期の実験で、私はマウスの初期発生に関与する成長因子を産生するint-2遺伝子を”破壊”しました。最初、私は int-2遺伝子の最初の3つのエクソンから”ターゲティングベクター”を構築しました。 [エクソン][イントロン][ int-2遺伝子][部分] 私は、 int-2遺伝子の機能を失わせるために、コーディングエクソンのひとつにネオマイシン薬剤耐性遺伝子を挿入しました。 [ int-2遺伝子の無効化] 私はまた、非相同DNA配列と単純ヘルペス(HSV)由来のチミジンキナーゼ(tk)遺伝子を加えました。 [ターゲティングベクター] それから私は、培養したES細胞にターゲティングベクターを導入するためにエレクトロポレーションを用いました。 マウスの染色体にターゲティングベクターが挿入されるときには、2つのシナリオのどちらかが起こります。 最初のシナリオは、相同組換えの間に、ターゲティングベクターと宿主の染色体の int-2配列が並び、置き換わるというものです。チミジンキナーゼ遺伝子はその配列が異なっているために交換の間に除かれます。 [宿主染色体] しかし、もし無作為な挿入が起こるなら、チミジンキナーゼ遺伝子を含んだターゲティングベクター全体が挿入されます。 [相同組換え] ターゲティングベクターの構築法により、私たちは2つのシナリオを容易に区別することができます。まず、ネオマイシンによる選択は、トランスジーンが組み込まれていない細胞を殺します。 [非相同組換え] [+ネオマイシン] [相同組換え] それから、抗ウイルス薬であるガンシクロビルが非相同組換えでチミジンキナーゼを組み込んだ細胞を殺します。[訳注:チミジンキナーゼがガンシクロビルを毒性のある物質に変えるため、細胞死が起こる。] [+ガンシクロビル] 狙ったトランスジーンを相同的に組み込んだ細胞だけが、2つの選択を生き残り、培養プレート上で増殖します。 これらの細胞は胚盤胞の中に入れられて、そしてその胚盤胞はキメラの胚を妊娠して出産するであろう代理母に入れられます。 キメラの子は遺伝子欠損を作る最初の段階だけです。何匹かのキメラの子はES細胞由来の生殖細胞を持っています。これらは黒色のマウス由来であり、黒色の毛をコードしている遺伝子を持っているでしょう。そのキメラマウスをアルビノ(白色)マウスと交配することで、生殖細胞質の中にES細胞のゲノムを持った黒色のマウスを作ります。 キメラマウスは黒色の毛の遺伝子を持った2つのタイプ(トランスジーンを持ったものと持っていないもの)の生殖細胞を作り出します。それから、黒色のマウスのどれがネオマイシン耐性遺伝子を持っているかを調べるため、スクリーニングを行います。オリジナルの実験ではサザンハイブリダイゼーション法を用いましたが、現在ではPCR法が広く使われています。 [野生型] [ターゲット変異体] PCRプライマーは、組み込まれたトランスジーンを持ったマウスで、400塩基対のPCR断片が生じるように設計されています。野生型のマウスでは、ネオマイシン耐性遺伝子は存在しないのでPCRで断片は現れません。 [PCR産物無し] ゲル電気泳動した時に、狙い定められた変異を持ったマウスは“+”で表されたひとつのバンドを示します。バンドが無いものは“-”のように表されます。 [400塩基対の断片] さて、メンデルの遺伝学に戻りましょう。陽性マウスの各々はその変異にとってはヘテロ接合体なので、2匹のヘテロ接合体の子の約25%が、欠損遺伝子のホモ接合体ということになります。 これらはヌル変異体と呼ばれています。ヌル変異体は機能的なint-2遺伝子を持っていません。これらのマウスは発生学的、解剖学的、生化学的、行動学的な違いについてチェックされます。 時に、表現型は部分的な遺伝子機能の結果であることがあります。相同組換えを用いると、遺伝子欠損や別のタイプの極めて特異的な変異体を作ることができます。 例えば、マウスのホメオティック遺伝子(Hox)の研究により、哺乳類のボディプランを決定するために、どのように協調的にホメオティック遺伝子群が働くのかについての極めて印象的な説明図が作り出されました。 [上腕骨] [とう骨] [尺骨] [マウスの前肢(遺伝子型AA; DD)] 私たちは異なる染色体上で見つかったHox遺伝子の複製したコピーである、Hoxa-11とHoxd-11の効果を研究しました。どちらの遺伝子のヌル変異体も前肢の解剖学的な生体構造にはわずかな違いしか示しませんでした。 [野生型マウスの前肢(遺伝子型AA; DD)] [Hoxa-11変異マウスの前肢(遺伝子型 aa; DD)] [Hoxd-11変異マウスの前肢(遺伝子型 AA; dd)] しかしながら、二重変異体では、とう骨と尺骨が基本的に失われていました。 [二重変異体 (genotype aa; dd)] この私のノックアウトシステムの限界のひとつは、発生の始めから完全に全ての細胞で遺伝子が欠損していることです。いくつかのヌル変異体は絶対に生存できません。 こんにちは、ブライアン•サウアーです。私は遺伝子欠損のタイミングや位置を明確にする問題をうまく回避するために、マリオの方法に磨きをかけました。その改良はP1バクテリオファージのCre組換え酵素システムの利点を取り入れています。 CreはloxPと呼ばれる2つのサイト間のDNAを除去するタンパク質です。各々のloxPは5’側に13塩基対と3’側にその塩基配列の反転したバージョンを含んでいます。中央に8塩基対があります。 [染色体DNA] [loxPサイト] Creの1分子が13塩基対のそれぞれに結合します。そして4個のCre分子がloxPサイトの間のDNAを取り除くための4量体を形成します。ひとつのloxPサイトが染色体中に残ります。 [Cre組換え酵素] 私はCre/loxP組換えシステムが哺乳類細胞でも働くことを発見しました! このシステムはカペッキーの相同組換えシステムと組み合わせると、マウスが成体に成長した後でも遺伝子を欠損することができます。 CA1と呼ばれる脳細胞の一種の中で、マウスのNMDA受容体を欠損させた時に、学習や記憶がどうなるかに興味がある研究者がこれを行いました。私たちはこの細胞の中にある受容体が記憶の形成に重要であると信じています。 [マウスの脳][マウスの海馬] 最初に相同組換えを用いて、2つのloxPに挟まれたNMDA受容体遺伝子をひとつ持つマウスを作製しました。私たちは、loxPのサイトが遺伝子を囲んでいることを、その遺伝子が“フロックされた”と言います。 [フロックされた受容体] [1番染色体] [12番染色体のコピー] 別のマウスはフロックされたNMDA遺伝子だけでなく、Cre遺伝子が別の染色体上に載っているように作られました。Cre遺伝子は脳細胞のCA1でだけ活性化するプロモーターに制御下されていました。 [7番染色体] [7番染色体のコピー] [CA1プロモーター] 2つの系統が交配されると、子の何匹かは2つのフロックされた遺伝子とひとつのCre遺伝子を受け取りました。サザンブロッティング法によりフロックされた遺伝子を検出し、PCR法によりCre遺伝子を検出しました。 これらのマウスでは、CA1細胞が形成されて、そのプロモーターがオンになるまでの生後約3週間の間は、CreによってNMDA受容体遺伝子が除かれることはありませんでした。 CA1細胞だけがNMDA受容体を失い、他の細胞では失われませんでした。 CA1細胞がNMDA受容体をもたない欠損マウスは、どこにいるかを記憶するための目印を使用することができませんでした。欠損マウスは、前もって周りの目印とともに設置した水中にある足場の場所を覚えることができませんでした。 [足場] NMDA受容体を持っている変異体の兄弟は、周囲の目印に集まった後、足場を見つけました。 [NMDA遺伝子を持つマウス] 相同組換えとCre/loxP組換えシステムによる遺伝子ターゲティングを組み合わせて、1塩基の変異から大規模な染色体の欠損まで、基本的にどんな改変でもマウスのゲノムに作れます。これらの改変は基本的には、発生の過程のどの段階でも、どの組織でも起こすことができます。

factoid Did you know ?

マリオ・カペッキは資金調達のために、遺伝子欠損のアイデアをNIHに提出しましたが、最初は却下されました。4年後、いくつか実験に成功したあとで、NIHはカペッキのプロジェクトに資金を出して、謝罪しました。

Hmmm...

Cre/lox組換えシステムは最初ファージで見つかりました。なぜ、このようなシステムが進化したのでしょうか?