テーマ 37マスター遺伝子は基本的な体づくりを制御します

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エリック・ヴィーシャウスとクリスティアーネ・ニュスライン-フォルハルトが、ショウジョウバエの発生段階を説明し、エドワード・ルイスがホメオティック変異について紹介します。

私はクリスティアーネ・ニュスライン-フォルハルトです。そして私は エリック・ヴィーシャウスです。私たちは、発生に関与する遺伝子や、これらの遺伝子がどのようにしてひとつの卵細胞を複雑な成体に変化させるかに興味を持っていました。 1970年代、私たちはショウジョウバエの発生に注目し始めました。キイロショウジョウバエは、いくつかの特徴的な発生段階を持っています。 キイロショウジョウバエ: 卵、幼虫、さなぎ、成虫 私たちは、胚が死んでしまう変異体を多く単離しました。これら全ての変異体は発生に関する欠陥を持っていました。これらの変異体を用いて、私たちは初期の胚発生を制御する遺伝子を発見しました。 [正常胚][変異胚] 受精卵は最初、極性を示していませんが、受精卵中のタンパク質は直ちに胚の前後(頭尾)と背腹の方向性を確立します。 [卵][精子] [前] [背] [腹] [後] いくつかのタンパク質は、濃度勾配を持って発現し、濃縮されて、頭部で最も多くなります。 他のタンパク質は胚の頭のみ、あるいは頭と尾の両方で発現しています。 更に別のタンパク質のセットは、腹から背への濃度勾配を持って発現しています。 胚のどの部分でも、異なる濃度と異なる組み合わせでタンパク質が発現しています。これらのタンパク質の違いが、発生の次の段階、つまり体節化に必要な特定の遺伝子のスイッチを入れます。 ショウジョウバエは複数の体節からできていて、胚で発現している遺伝子がこれらの体節が頭、胸、腹のいずれになるかを規定しています。 まず、頭、胸、腹の大まかな領域は、”ギャップ“遺伝子の発現によって決まります。 頭部、胸部、腹部 この例では、Krüppelは胸節において主に発現するギャップ遺伝子です。Krüppel変異体は胸節を失っています。 [ギャップ突然変異- Krüppel] ギャップ遺伝子は、ペアルール遺伝子を調節するタンパク質を発現します。;これらのタンパク質はそれぞれの体節の形成を規定しています。 [体節] この例では、ペアルール遺伝子である fushi tarazu (ftz)は、体節の境界で発現しています。 ftz変異体は、ひとつおきの体節を欠失しています。 [ペアルール突然変異] それぞれの体節は、更にそれぞれの体節の前後方向を決定するセグメントポラリティー遺伝子によって特徴付けられます。 [前][後] engrailedはセグメントポラリティー遺伝子です。変異体では、それぞれの体節の後端が前端の鏡像に置き換わっています。 [セグメントポラリティー突然変異] 無定形性の卵が、体節内の位置によって特徴付けされた細胞からなる胚に変化するまでの全ての工程はわずか数時間で行われます。これは次の発生段階に重要です。 私は、エド・ルイスです。私は体の部位がどのようにして発生するのかに興味を持ちました。例えば、ショウジョウバエの場合、翅や肢や触覚がどこでいつ形成されるかを規定しているのか、と。 ニュスライン-フォルハルトとヴィーシャウスはショウジョウバエの胚で、どのようにして体節が決まるのかを証明しました。変態後、これらの体節は成虫のショウジョウバエのさまざまな部位になります。 各体節は特定の構造を持っています。例えば、触覚は頭節から発達し、翅は胸節から発達します。私は体節の特殊化を制御しているホメオティック遺伝子に注目しました。これらの遺伝子はなにがどこに作られるかを決定しています。 [頭] [足のみ] [足と翅] [足と平均棍] “ホメオティック”は、それぞれの身体部位が将来何になるかをその固有性により決める過程を定めます。私が最初に研究した Ultrabithorax(Ubx)と呼ばれるホメオティック遺伝子は非常に明確です。Ubx変異体は一対ではなく二対の翅を持ちます。 [Ubx変異体] 翅は通常、胸節#2から作られます。隣接している体節#3からは通常は一対の平均棍が作られます。平均棍はバランスを取るために使用される小さな翅に似た器官です。 Ubx変異体では、体節#3は体節#2に変化します。平均棍の代わりに、余分な一対の翅を持ちます。 [頭] [足のみ] [足と翅] [足と翅] ホメオティック形質転換の他の特筆すべき例として、 Antennapedia (Antp) 変異体があります。 Antpタンパク質が過剰だと、頭節のひとつにある触覚が足に変化します。その足は、通常は胸節#2に見られるものに似ています。 [Antennapedia (Antp) 突然変異体][野生型] 体節それ自身は本質的に全て同一です。というのも同じ構造を作る能力を持っているからです。ホメオティック遺伝子の正確な発現が、どの体節からどの特定の組織が作られるかを規定しています。 ホメオティック遺伝子は染色体上に群をなして見られます。Bithorax群にはUltrabithoraxと他の2つの遺伝子が含まれます。これらの遺伝子は、胸および腹の体節の分化を制御しますが、胚での発現位置の順番で染色体に並んでいます。 [Bithorax群] Antennapedia群の5つの遺伝子は、頭と胸の体節の分化を制御しますが、発現位置の順番で染色体に並んでいます。 [ Antennapedia群] 全てのホメオティック遺伝子は、ホメオボックスと呼ばれる180塩基対の保存された領域を共有しています。この領域は60個のアミノ酸をコードしています。 [ホメオボックスタンパク質の配列] 60個のアミノ酸は、ホメオボックスタンパク質のDNA結合部位です。ホメオボックスタンパク質はプロモーターに結合し、体節に体の部分を作らせる遺伝子を活性化します。 [antpタンパク質][結合サイト][足遺伝子] [足遺伝子の活性化] [足遺伝子の翻訳] [リボソーム][足タンパク質] 他の例では、ホメオボックスタンパク質は遺伝子発現を停止させます。 Ultrabithoraxの場合、UBXタンパク質は体節#3で翅の遺伝子の発現を阻害しています。阻害を止めると、ショウジョウバエに余分な一対の翅が生えます。 ショウジョウバエの初期の祖先は現在のミツバチやスズメバチのように2対の翅を持っていた可能性が非常に高いのです。Ubxは体節#3で2番目の一対の翅を形成しないように進化しました。 多数の体節からなる生物から現在のショウジョウバエに進化するためには、遺伝子発現のスイッチオンとオフだけが必要であったことは非常によく理解できます。 このタイプのホメオティック制御は、ショウジョウバエに限定されるものではありません。哺乳動物もhox遺伝子と呼ばれるホメオティック遺伝子を持っています。哺乳類が体節も持つとみなすのは少し難しいですが、それぞれの胚の図を比較してみましょう。 [hox遺伝子] [マウス胚] hox遺伝子群の染色体の位置と、マウス胚での前後軸上の発現位置には明確な相関関係があります。 そして、hox遺伝子はショウジョウバエで機能しているホメオティック遺伝子とほとんど同じ方法で哺乳類の細胞の分化を制御していることは明らかです。

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“ノーベル賞”からの電話がぐっすり眠っていたエリック・ヴィーシャウスを起こしました。ノーベル賞委員会は眠たげな声のヴィーシャウスがメッセージを理解できるとは考えませんでした。彼らはクリスティアーネ・ニュスライン-フォルハルトや彼の友人、協力者にヴィーシャウスに電話して、事の重大さを理解させるよう催促しました。

Hmmm...

ショウジョウバエ以外の生物はどのようにして発生するのでしょう?哺乳類の初期胚発生は、ショウジョウバエと同じなのでしょうか?