テーマ 36細胞ごとにさまざまな遺伝子が活性化されます

Get Adobe Flash player

イゴール・ダヴィドとトーマス・サージェントが、どのようにして異なる細胞で発現している遺伝子を見つける方法として、サブトラクティブmRNAハイブリダイゼーションを開発したのかを説明します。パトリック・ブラウンとステファン・フォダーが、どのようにしてゲノムが、DNAアレイとジーンチップ®.でスクリーニングできるかを示します。

こんにちは、私がイゴール・ダヴィドです。そして、私がトーマス・サージェントです。私たちは“分化”に関わる遺伝子に興味を持っていました。生体の中の全ての細胞が同じセットの遺伝子を持ちますが、多くの異なった種類の細胞があります。 [細胞] [卵][精子][筋肉][赤血球][神経][上皮] 私たちは、異なる細胞種で発現する遺伝子をすばやく見つけるために、サブトラクティブmRNAハイブリダイゼーションという技術を開発しました。この技術がどのようなものかをここでお見せしましょう。 私たちは、実験系にカエル(アフリカツメガエル)を使いました。カエルには、特異的な発生段階があります。 特定の発生段階でのmRNAの種類の違いを比較することで、種類の異なる細胞ごとに発現する遺伝子セットを見つけられるのではないかと考えました。 胞胚 原腸胚 神経胚 尾芽 例えば、胞胚は未分化の細胞が集まったボールですが、原腸胚期では外胚葉、内胚葉、中胚葉の細胞層が発達します。 外胚葉 中胚葉 内胚葉 未分化の細胞がどのような細胞に分化するかを特定する遺伝子は、原腸胚期あるいはその直前に発現しなければなりません。このことを確かめるために、異なる発生段階の胚からmRNAを抽出しました。 胞胚mRNA 原腸胚mRNA そして、逆転写酵素を使って原腸胚期のmRNAに相補的なDNA(cDNA)を作製しました。 cDNAは相補鎖なので、対応するmRNAとハイブリダイズすることができます。mRNAを分解した後で、原腸胚由来のcDNAと胞胚由来のmRNAを混ぜました;両方の時期に見られるmRNAがcDNA-mRNAハイブリッドペアを形成します。 原腸胚由来cDNA(緑)+胞胚由来mRNA(赤) 私たちは、混合物をcDNA-mRNAハイブリッドに結合する性質を持つハイドロキシアパタイトのカラムを通過させました。このようにして、効率的に両方の時期に共通に発現しているmRNAを除去し、原腸胚に特異的なcDNAを分離しました。 ハイドロキシアパタイトカラム 分離したcDNAをプラスミドに挿入しました。これらの組換えプラスミドは、原腸胚に特異的なcDNAを将来の研究のために継続的に利用できる、クローンライブラリーになりました。 [プラスミド][細菌] そのユニークなcDNAは、放射性標識プローブとして発生ドットブロット解析に使うことができます。 異なる発生時期から調製したmRNAを特別な紙(ニトロセルロース)の上にスポットしました。 (訳注:数字は受精後の日数) 胞胚 原腸胚 神経胚 尾芽 [等々] それから、その短冊にスポットしたmRNAにハイブリダイズする放射活性のあるcDNAと短冊をいっしょにインキュベートしました。これらの短冊で写真用フィルムを感光させると、放射活性のあるcDNAがハイブリダイズしたところに黒いスポットが現れます。 この結果から分かるように、これらの短冊を並べると、これらの遺伝子の発生における段階や時間の可視化された記録が得られます。 放射活性のあるcDNAを使い、組織サンプルにおいても同様のハイブリダイゼーションを行うことが可能です。この技術はin situ(インサイチューはラテン語で“状態の”の意)ハイブリダイゼーションで、生体組織のどこにmRNAが発現しているかを可視化できます。 [RCG(網膜神経節細胞)][レンズ][cpg-15発現][ステージ 45] これは、発生中のカエルの眼における cpg-15のmRNAの発現のin situハイブリダイゼーションです。 cpg-15は、視神経回路の発達に必須の遺伝子で、網膜の神経節(RGC)で発現しています。 網膜の神経節は画像情報を脳へ伝達する役割を担っています。cpg-15のmRNAにハイブリダイズした放射性標識プローブが、その発現部位を銀色のドットで示しています。 こんにちは、私はパット・ブラウンです。私は、cDNAをスライドガラスの表面に固定化する技術を開発しました。このDNAアレイ技術を利用すると、大規模に遺伝子発現を解析することができます。 成長段階において特異的に発現するmRNAが抽出されて、相補的なcDNAへと逆転写されます。そしてそれらのcDNAは、特殊な表面コーティングを施したスライドガラス上に固定化されます。 [異なるcDNAを含むウェル] スライドガラスはその表面がプラス(+)の電荷を持つポリリジンでコーティングされています。DNAはマイナス(-)の電荷を持つため、cDNA分子はイオン性の相互作用によりスライドガラス表面に“貼り付き”ます。貼り付いたcDNAは、まだDNAプローブと相互作用できます。 私たちは、がん細胞での遺伝子発現プロファイルを調べるためにDNAアレイを使いました。びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)は、よく知られている白血病です。私たちは、このDLBCLのサブタイプが生存率と相関性を持つことを見出しました。 私たちはリンパ腺で発現する遺伝子とがん関連遺伝子を搭載したDNAアレイ(チップ)を作製しました。このチップには、合計17,856個の遺伝子のcDNAが固定化されていて、“lymphochip (リンフォチップ)”と名づけました。チップ上のそれぞれの正方形は異なるcDNAであることを覚えておいてください。 次に、異なるDLBCLのがん細胞からcDNAを作製しました。 [17,856遺伝子のアレイ] 一方のcDNAサンプルは、赤い蛍光色素で標識し、もう一方は緑の蛍光色素で標識しました。 標識したcDNAとアレイをインキュベートして、アレイ上に固定化した一致する遺伝子と結合させました。 私たちは、DNAアレイ上の遺伝子(cDNA)の位置を知っているので、蛍光シグナルの強さに基づいて、個々の遺伝子発現のレベルを数値化することができます。もし、ある遺伝子が DLBCL1という亜型細胞でのみ発現していれば、チップ上の正方形は赤くなり、また、 DLBCL2という細胞でのみ発現していれば、チップ上の正方形は緑になります。また、両方の細胞で同等に発現している遺伝子であれば、正方形は黄色になります。 私たちは、GC B-likeと活性型B-likeの2種類のDLBCLのサブタイプを同定しました。これらのサブタイプは、治療法によって異なる応答を示すため、このような診断で、患者ごとのより適切な治療ができます。このような患者ごとの適切な治療を“薬理ゲノミクス”といいます。 [DNAアレイ] 更に私たちは、非常によく似た2種の白血病における遺伝子発現の差を解析することもできます。この解析によって、がんがどのように機能するかをより詳しく理解することができ、願わくは、より効果的な治療の開発につながるかもしれません。 こんにちは。私はステファン・フォダーです。パット・ブラウンのDNAアレイは、cDNA断片を利用しますが、私は、調べたいと思うDNA配列をDNAアレイ上で合成できるジーンチッププローブアレイという技術を開発しました。ジーンチップは、特殊なガラスの上にDNA配列を合成、整列したものです。 [ジーンチップカートリッジ] 光の照射によって化学合成を制御することで、チップ上にDNA配列が合成されます。まず、ヌクレオチドを持つ基板をチップ上の定められた場所に固定化します。 ヌクレオチドはDNA合成を阻む保護基(X)で守られています。この保護基は光で分解されるため、紫外線の照射によって外れます。保護基(X)が外れると、DNA配列は重合反応により伸長します。 [保護基(X)] [UV光照射] [UV光照射無し] チップにはフィルターが組み込まれており、いくつかの(ある部分の)ヌクレオチドだけが光に照射されます。これらの脱保護されたDNAは、次のヌクレオチドを受け入れ、鎖が伸長します。 [フィルター] 合成ステップごとにフィルターの位置を変える(光の照射される部分を変える)ことで、およそ20塩基の長さの異なる配列が整列したジーンチップを合成することができます。 cDNAプローブ(サンプル)をジーンチップに添加することで、一度に数万種もの異なる遺伝子の発現レベルを同時に解析することができるのです。 この全体のプロセスがコンピューターで制御されているので、ヒットした配列を速やかに探し出すことができます。そして、データベースの探索から、それらの配列の関連遺伝子情報を得ることもできます。 この例では、ヒットした遺伝子配列はBRCA-2というもので、ヒトの卵巣がんと乳がんの原因となることが示唆されています。同じジーンチップ上にBRCA-2の突然変異配列を搭載することができるので、女性の乳がん発症リスクの診断に利用することができます。 最終的には、誰でも個別の遺伝子プロファイルを搭載したジーンチップを持つことができるでしょう。一塩基多型(SNPs)と呼ばれる個人に特徴的なDNA配列が、究極的な個人を同定する特徴となります。遺伝子病に関わる変異などもジーンチップ上に搭載され、テーラーメイドの薬剤処方や診断に利用することができるでしょう。

factoid Did you know ?

アフィメトリクス・ジーンチップ®を作製する上で最も高価で時間がかかる部分は、チップ上でのヌクレオチド合成のための保護基(X)の脱着を制御する紫外線照射フィルターの作製です。

Hmmm...

異なる細胞が異なる遺伝子を発現するだけでなく、遺伝子発現のタイミングも調整されています。これはどのようにして行われるのでしょうか?