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DNAってなに?

用語説明

このコーナーはよく目にする言葉や、かずさDNA研究所のホームページで出てくる言葉の解説をします。

全般的な用語

遺伝情報
生物が自己と同じ物を複製するために、細胞から細胞へ、親から子へ伝えている情報で、DNAの塩基配列に符号化されています。生物はそれぞれ、数千種類から数万種類のタンパク質で作られています。ヒトでは2〜3万種類位といわれていますが、正確な数はわかりません。遺伝情報の中身は、主として、これらタンパク質をつくるための情報(タンパク質の設計図)と、どのタンパク質を、いつ、どこで、どれだけ作るかという発現制御の情報から成り立っています。生物は、タンパク質の他に、炭水化物、脂肪など、沢山の物質からできていますが、これらの物質は、素材からタンパク質(酵素)によって合成されるので、本質的には、炭水化物、脂肪などの合成に係わるタンパク質をつくる設計図があればよいこととなります。
遺伝暗号
アミノ酸配列(並び)と数を指定すれば同じタンパク質を作ることができるので、タンパク質の設計図は、アミノ酸の配列と数を指定する情報からなっています。この情報を遺伝暗号といいます。遺伝暗号は微生物からヒトまで共通です。しかし、どのタンパク質を、いつ、どこで、どれだけ作るかという発現制御の情報は、生物によって異なります。
DNA
アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類の化合物(塩基)が並んだ繊維状の高分子で、その「並び」(塩基配列)のなかに、親と同じものを作る遺伝情報が符号化されています。これは、ちょうどコンピュータの磁気テープに例えることができます。このテープには主として、生物がつくっているタンパク質の設計図の符号(遺伝子)と、どのタンパク質を、いつ、どこで、どれだけ作るか、を指令する符号(発現制御の情報)が並んでいます。ヒトのDNAでは、塩基の数は約30億個にも達し、このような長いDNAが1つ1つの細胞の中に折り畳まれているのです。親と同じものを作る遺伝子情報を全部持ったDNAを「ゲノムDNA」と呼びます。
遺伝子
DNA上の「一つのタンパク質の設計図」に相当する部分を「遺伝子」とよんでいます。ヒトのDNAには、2〜3万個位の遺伝子が並んでいることになり、そのなかには臓器や血液など「からだ」を造っているタンパク質の遺伝子をはじめ、疾病や老化に係わる遺伝子、免疫や記憶に係わる遺伝子、さらにはDNAに書かれた符号を解読する装置の遺伝子などが含まれています。最近は植物の遺伝子の研究も盛んで、植物の茎の太さや高さ、種子の大きさや数、温度や乾燥、薬剤への抵抗性なども、遺伝子によって決まっていることが明らかになってきました。
mRNA
DNA上に並んでいる遺伝子の情報をもとにタンパク質が合成される際、遺伝子が直接、解読装置で読まれるのではなく、一旦、その部分のコピーがとられ、そのコピーを解読装置が解読しています。このコピーをメッセンジャーRNA(mRNA)と呼んでいます。化学構造はDNAに良く似ていますが、DNAが安定しているのに比べてRNAは壊れやすい構造になっています。なお遺伝子によっては、「一つのタンパク質の設計図」に相当する部分がいくつかに分割されている場合がありますが、その場合は、全体を含む長いRNAが一旦作られたあと、繋ぎ換えがおこって(スプライシングと呼ぶ)、設計図のところだけのRNAにプロセスされ、解読されます。
cDNA
mRNAの塩基配列をもとにしてつくられたDNAです。相補的という意味の(complementary)の”c”をとってcDNAと呼びます。タンパク質の設計図は、mRNAの塩基の並びを調べれば簡単にわかる筈です。特に「一つのタンパク質の設計図」に相当する部分がいくつかに分割されている場合、繋ぎ換え(スプライシング)が起こった後のRNAを調べるほうが簡単です。しかし、RNAは壊れやすく、また増量することも難しいので、通常、cDNAに換えて分析しています。
cDNAライブラリー解析
細胞から全部のmRNAを取り出し、cDNAに換えた混合物をcDNAライブラリーと呼びます。原理的にはcDNAライブラリーを解析すれば細胞が作っているタンパク質の設計図を全て解読できることになります。しかし、細胞の種類によって作っているmRNAの種類や量が異なり、また長いcDNAを作ることは技術的に大変難しいので、実際にcDNAからタンパク質の設計図を解析することは容易ではありません。
EST
cDNAライブラリーからランダムに選んだクローンの両端から、一度だけ読みとられた遺伝子の配列(約300〜600bps)で、Expressed Sequence Tagの略称です。
ESTの配列情報は、データベースに登録され、新規の遺伝子の発見や遺伝多型の解析などの研究に利用されます。
ORF
ゲノムDNAの塩基配列の中には、遺伝暗号としてタンパク質合成をコードしている「遺伝子」の領域と,そうではない配列の領域があります。この遺伝暗号では,コドンと呼ばれる3つの塩基の組み合わせに対応する各アミノ酸が結合されてタンパク質がつくられることにより翻訳(「RNA→タンパク質」)されます。
このアミノ酸合成の開始コドンから終止コドンまでの遺伝子の読み取り枠をOpen Reading Frame (ORF)と言います。
遺伝子工学(遺伝子操作)
DNA鎖を特異的に切断して遺伝子などを切り出し、繋ぎ変えたり、遺伝暗号を書き換えたりすること。一旦改変した遺伝子(DNA)は組換えDNA技術によりクローン化し増量するので、全行程を含めて遺伝子工学あるいは遺伝子操作と呼ぶことが多い。制限酵素と呼ばれる酵素が発見されてこのような実験が可能になりました。
組換えDNA技術(実験)
遺伝子工学の技術を用いて、ある生物のDNAを切り出し、他の種類の生物に注入して働かせる技術。遺伝暗号(タンパク質のアミノ酸配列を指定する符号)は、微生物からヒトまで共通なので、当初、組換えDNA技術を応用すれば、例えばヒトのタンパク質(成長ホルモンやインスリンなど)が大腸菌で簡単に生産できると思われていました。しかし実際には、発現制御の情報(いつ、どこで、どれだけ作るという情報)や解読装置が高等生物と微生物では違うので、簡単にはできないことがわかってきました。また、細胞に外からあまり大量のDNAを入れると、細胞が弱って死ぬこともわかりました。その点、交配とか細胞融合のほうがはるかに大量のDNAを移すことが出来ると言えます。
なお、組換えDNA技術というと物質生産などの応用面を想像しがちであるが、この技術のおかげで、微量のDNAを増量して構造を解析したり、遺伝子の働きを調べたりすることが可能になりました。組換えDNA技術の意義は、この技術によってバイオサイエンスが進歩し、その結果、人類に寄与するという間接的効果が極めて大きいのです。
ゲノムDNA解析
生物が自己と同じものを複製するために細胞から細胞へ、親から子へ伝えているゲノムDNAの全塩基配列を解読すること。生物の全遺伝子の構造や発現制御の情報が一挙に解読されることになります。しかしゲノムDNAの塩基数は細菌のものでも数百万個もあるので、現在の技術で解析を進めるのは大変な作業です。ましてやヒトゲノムのように30億個もあるDNAを解析するには、技術的なブレークスルーと、膨大なデータ処理のための基礎研究が必要とされます。
公的データベース:DDBJ :DNA Data Bank of Japan
国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ 研究センター内(静岡県三島市)で運営されている欧州のEBI/EMBLや米国の NCBI/GenBankと並ぶ3大国際 DNA データバンクのひとつである「国際塩基配列データベース」のことです。国際塩基配列データベースは,全世界の研究者が実験によって決定したDNA(又はRNA)の塩基配列データを国際的な機関(3大データバンク:DDBJ,EMBL,GenBank)に登録し、3大データバンクが3者間で定めたデータ構築規範に基づいて収集・編集され,人類共通の財産であるという認識のもとに各データバンクのデータは研究者が無償で自由に利用できるようにインターネット上で公開されています。
エキソンとイントロン
核をもつ生物の遺伝子DNAの多くは、エキソンとイントロンで構成されており、DNAの中で成熟型mRNAとなる領域をエキソンといいます。エキソンの多くはタンパク質のコードを担う領域で実際にアミノ酸を合成するための遺伝情報をもつ部分となります。(エキソンは、ヒトの場合、全ゲノムDNAの5%程度以下しか存在しないと言われています。)
細胞の中の核内で、遺伝子DNAから転写された前駆体mRNAはスプライシングという巧妙な仕組みによって成熟RNAに変換され、その際にイントロン由来の部分のみが紡ぎだされます。この結果として、エキソン由来の配列のみが成熟型mRNAに残り、成熟型mRNAからタンパク質が作られることになります。このことから、「遺伝」にとっては、遺伝子DNA中のエキソン領域が特に重要だと一般的に考えられています。
スプライシング
核をもつ生物の多くの遺伝子には、エキソンと呼ばれる直接的にタンパク質の構造を決定している部分とイントロンと呼ばれるエキソンを分断している部分が存在します。核内で前駆体型mRNAからイントロンを除去し繋ぎかえをする過程を、スプライシングと呼んでいます。
DNAマーカー
膨大なDNAの塩基配列の中からある生物の特定の遺伝子を探し出す際の目印となる特徴的な配列部分を言います。DNAマーカーをベースとして研究を進展させ、各々生物の特徴の関連が明らかになれば、植物・家畜の育種などその利用価値は高いものとなります。
DNAチップ(「DNAマイクロアレイ」)
小さなチップ上に数千から数万種類のDNAの断片を精密機器(アレイヤー)で固定したもので、この遺伝情報が組み込まれているDNAチップを用いる技術は、現在のDNAの研究には欠かせないものです。
DNAチップを用いた実験の目的は、大きく分けて二つあります。一つはサンプル中に含まれているたくさんの種類のDNAの配列がどうなっているかを一度に決めてしまう目的であり、もう一つはたくさんの遺伝子がどれくらいの活発さで機能しているかを一度に調べるのが目的です。前者は個人間の遺伝子の構造の違いを調べる際に必要ですし、後者は個人の組織や細胞の中で何が起こっているかを調べるための非常に有効な方法です。
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実験に関する用語

クローン
遺伝的に同一な細胞や個体あるいは特定の遺伝子型を持った均一な細胞群のこと。
元々は植物や細菌などが分裂増殖してできる細胞集団や個体群をさす呼び名であり、ギリシャ語の「切り枝」や「挿し木」の意。
クローンを作ることをクローニングといいますが、DNA(遺伝子)のクローニングとは、特定のDNA(遺伝子)を大量に増やすことを言います。
ベクター
ベクターは、ヒトや動植物・微生物などの遺伝子を取り出して、大腸菌あるいは他の細胞のDNAに組み込む際の運び屋の総称です。
具体的には、適当な制限酵素で切り出した遺伝子を, やはり制限酵素で切れ目(糊しろ)を入れた環状 DNA に挿入した上で菌体内に運搬します。
ベクターには、プラスミド(細菌の染色体とは独立して自己複製する環状二本鎖DNA分子)に組み込まれたものや増殖機能の利点をいかした細菌、ウイルスから作られたものなどがあります。
制限酵素
DNAは非常に長く、研究を行うには手ごろな長さに切断する必要があります。そのときに用いられるのが制限酵素です。制限酵素は二本鎖DNA上の標的となる特定の塩基配列を認識し,その配列の内部あるいはその近傍でDNA鎖を切断する性質を持っています。制限酵素は多種ありますが、それぞれ特定の塩基配列にしか反応しない特徴を持っています。
逆転写酵素
RNAを鋳型として、相補的なDNAを合成する酵素を「逆転写」酵素といいます。DNAを鋳型としてRNAを合成する「転写」の逆反応であるためこの名があります。
逆転写酵素は、遺伝子クローニングで、mRNAを鋳型としてcDNAを作る際に繁用されています。
PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)
特定のDNA の断片を大量に増やす手法を指して言い、ポリメラーゼ連鎖反応法とも呼ばれています。DNA を複製する酵素であるDNAポリメラーゼを利用して、特定のDNA領域だけを増幅し、検出できます。
目的のDNA領域をはさんだ2種類のプライマーとDNA合成酵素(ポリメラーゼ)によるDNA合成反応を温度コントロールすることにより短時間に特定DNA領域を数10万倍に増幅できるため、増幅遺伝子工学やDNA鑑定などで重要な役割を果たしています
プライマー
PCR法において、DNAを複製するときに使われる20〜30塩基の短いDNA断片やRNAのこと。
プライマーは、増やしたい部分の上流に結合する塩基配列を持つもので、PCR法の連鎖反応開始起点ともなるものです。
DNAシーケンサー
DNA塩基配列自動決定装置。クローン化、又はPCR法によって増殖されたDNAの塩基配列を、蛍光色素を利用して読み取っています。
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ポストゲノム研究のキーワード

ポストゲノムシークェンス
ヒトゲノムの解読が2003年4月に完了しました。またイネやマウス、その他の生物でも次々とゲノムの解読が進められています。ゲノムの解読が終了した生物では、研究の主眼は解読された塩基の並びがどんな意味をもっているのかといった機能の解明や利用方法に移ってきます。ポストゲノムの研究手法は様々です。転写を研究する(トランスクリプトーム)、タンパク質の働きを研究する(プロテオーム)、代謝物の働きを研究する(メタボローム)などが、代表的な研究としてあげられます。
プロテオーム
protein(タンパク質)と ome(すべての)を融合して作られた造語(proteome)で、細胞の活動に必要な全タンパク質を指す用語として用いられます。細胞内の全遺伝子を意味するゲノムに対して提唱された概念です。
プロテオーム研究では、種々の生物種において組織・生育時期特異的に発現しているタンパク質のデータベースを作り上げ、病気の治療や医薬品の開発、環境問題や食料問題を克服するための有用植物の作出等につなげるのが主な目的とされています。
ゲノム研究に続く流れ(ポストゲノム)として位置付けられ研究が活発化しています。
プロテオミクス
プロテオミクスとは、「生体内の細胞や組織が作り出すタンパク質の集合体(プロテオーム)の全体像を解明する試み」あるいは「プロテオームを研究すること、またその方法論」を指す用語として用いられます。
ゲノムは生物の遺伝情報のフルセットですが、そこにあるのはタンパク質を作る設計図にすぎません。細胞の骨組みや活動はタンパク質が支えているので、細胞内の全タンパク質(プロテオーム)を解析することは、生体を解明するための新たなステップであることがわかります。
プロテオミクスは、個別のタンパク質を扱う従来のタンパク化学とは考え方や手法が異なりゲノム情報をベースとして、より系統的・網羅的にとらえることにより、1)特定の細胞や組織で生成される全タンパク質(プロテオーム)を解明、2)タンパク質がどのように連携してネットワークを作るかを解明、3)正確なタンパク質の立体構造を解明し、特定のタンパク質を活性化させるスイッチがどこにあるかを探索し、副作用が少なく効果の高い薬を開発などに役立てるアプローチと言えます。
SNP:single nucleotide polymorphism
遺伝子の本体は、DNA(デオキシリボ核酸)で、4種類の塩基という化学物質が暗号文字となって、二重らせん(縄ばしご)に連なっています。この塩基の並び方が1カ所異なる場所を「一塩基多型」といい、英語の頭文字をとりSNP(スニップ)あるいは複数形でSNPs(スニップス)と呼ばれています。1000個に1個程度の割合で存在し、日本人には日本人特有のSNPがあると考えられています。
ヒトは、遺伝子の塩基配列に基づき、様々なタンパク質を体内で合成していますが、SNPによって、特定のタンパク質が作れなかったり、他人と違うものを作ったりします。これが顔つきや体形などの個人差、民族差ももたらすと言われています。また、アルコール耐性の差や煙草による毒性の出現頻度、薬剤感受性の違いや肥満傾向ほか病気のかかりやすさや薬の効き方に関係することから、オーダーメイド医療の観点から最も注目を浴びています。
バイオインフォマティクス
バイオインフォマティクス(bioinformatics)とは、生物学(biology)と情報科学(informatics)の造語であり、生物学で集められた実験データ等を情報科学を利用して新しい知識を発見する学問のことです。
バイオインフォマティクスは、ゲノム解析に伴う大量のDNA配列情報を処理のために必然的に生まれたものです。ゲノム研究の結果、これまでに大量のタンパク質の配列・DNAの配列がデータベース化され、今なおデータを蓄積し続けています。これらの膨大なデータや知識を整理し、相互作用情報という観点から体系化すること、すなわち、生命科学と情報科学を合体させて、コンピュータの中で生物学の研究をすることにより、今までできなかったような研究開発をしていく新しい分野です。
ゲノム情報を基盤として様々なデータベースを活用し、より詳細な生物のメカニズムや生命の原理を明らかにし、新産業の創出に貢献することなどが期待されています。
バイオマス
生物資源(バイオ)と量(マス)からなる造語。有機物の物質的な量を意味しますが、生物由来の物質からなる食料、資材、燃料をさすことがあります。
化石燃料(石油や石炭)は昔の生物が化石になったものですが、限られた資源であることや、環境問題を引き起こす原因だとも言われていることから、現在、バイオマスとは呼ばないこととされています。
バイオマスは、循環型社会を考えるにあたって物質循環の基本となる考え方です。生分解性プラスチックのように原料の農産物からその廃棄物まで、つまり、生産から消費、廃棄、再生産までを一貫して捉えるものです。また、植物・動物由来の資源として、幅広い意味を持つ言葉でもあり、私たちの食べ物や、木材などもバイオマスと考えられます。
現在の文明は化石燃料を大量に消費することで成り立っているものなので、化石燃料の枯渇や環境汚染などは、私たちが直面している非常に大きな問題です。今後は現在廃棄されているもの、使われていないものを「バイオマス」として利活用していくことが重要です。新しいエネルギーの利用形態を生み出すことも期待されています。
産学官の連携
1998年8月、国により「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(「大学等技術移転促進法」)が施行されました。その結果、大学の共同研究センターやリエゾンセンター(「リエゾン」とは、「仲介、つなぎ、橋渡し」等の意の仏語。)、公的試験研究機関などで産学官連携窓口を設けるなど連携に取組む機関が増え、大学や研究機関等で創造された技術やノウハウを民間企業で産業化へ結びつける動きが活性化しています。
産学官の連携は、企業にとっては技術的課題の解消など、外部資源を活用した効率的な研究開発や独自商品開発・新規分野の開拓を可能とします。一方、大学や研究機関等でも研究成果や特許などの有効活用や産業界のニーズを的確に反映した研究を行うことができるなどのメリットがあります。
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植物遺伝子の研究のキーワード

光合成
太陽光エネルギーを利用して、水と二酸化炭素から有機物を生産、副産物として酸素を発生する反応で、約30億年前にラン藻の祖先が獲得し、その後植物に伝えられたと考えられています。現在、地球上のエネルギーの大部分は、光合成生物(ラン藻、植物など)が太陽光エネルギーを捕捉することによって得られたものです。化石エネルギー(石油石炭などの資源エネルギー)も、もとをただせば光合成によって生産されたものです。
ヒトを含む全ての動物は、光合成によって植物が生産した有機物に依存して生きています。また、酸素呼吸を行う全ての生物は、光合成により発生した酸素に依存して生きていますので、光合成は非常に重要な植物の働きであると言えます。
共生窒素固定
2種類以上の生物が、互いに協調し助けあって生きている状態を共生と言います。マメ科植物では、根粒菌というバクテリアの一種が、窒素固定で作ったアンモニアを宿主であるマメ科植物に供給する代わりに、植物から光合成産物の炭水化物を受け取って共生を行っています。窒素は植物の生育に欠かすことのできない物質ですが、植物は、大気中の窒素の吸収することができないため多量の窒素肥料が必要です。しかし、根粒菌は窒素ガスをアンモニア化(固定化)することができます。アンモニアは植物が直接利用することができるので、マメ科植物は窒素が欠乏した土壌でも生育することができるという特徴をもっています。
窒素肥料
窒素は植物の生育にとって必須な栄養源ですが、植物は大気中の窒素をそのまま利用することができません。そこで、現在は窒素ガスと水素ガスを高温高圧のもとで化学反応させることによってアンモニアを合成し(ハーバー・ボッシュ法)、これを窒素肥料として用いています。しかし、この過程で大量のエネルギーを消費するのみならず、工場からの輸送コスト、過剰施肥による土壌、水質汚染など多くの問題点が指摘されています。
ラン藻
バクテリアの一種ですが、酸素発生型(植物型)の光合成を行うことができ、他の生物が生産した有機物に依存しないという特徴(独立栄養生物と言います。)があります。ラン藻の祖先は、酸素発生型光合成を行った地球上最初の生物の一つです。植物の光合成能は、ラン藻の祖先が細胞内に共生することによって獲得されたと考えられています。そのため、光合成のメカニズム(部品や反応機構)が植物のものと類似しているため、植物の光合成研究のモデル材料としても研究されています。
シロイヌナズナ
シロイヌナズナはアブラナ科の植物です。この植物はおよそ25万種あるといわれる全植物種の代表として、植物の基本的なメカニズムを研究するための素材として国内外の研究者に利用されています。シロイヌナズナはゲノムサイズが約1億2千万と小さく、また成長が早く交配実験が容易なこと、他の植物と共通する遺伝子を多く持ち構造や配置が似ているといった優れた特徴を備えています。
根粒菌
根粒菌は土壌中に広く存在するバクテリアの一種(土壌細菌)で、自然界ではクローバーやダイズなどのマメ科植物の根の中にも存在することが確認されています。根粒菌がマメ科植物の根に感染すると、根粒という新しい器官が作られます。根粒菌は、根粒の中で大気中の窒素ガスからアンモニアを作って植物に供給し(共生窒素固定)、その見返りとして、植物は光合成によって生産した有機物を根粒菌に提供する「共生関係」を作ります。その結果、マメ科植物は窒素が欠乏した土壌でも生育することができます。
菌根菌
大部分の植物の根は、土壌中で菌類が感染し菌根を形成しています。これらの菌を菌根菌と呼んでいます。菌類と根が強く結合することによって、菌類から伸びる菌糸も栄養吸収などの点で根の一部として機能する側面がでてきます。一般に、菌根が形成されることによって植物の生長が促進されるため、農業上の重要性も高いと考えられます。
ミヤコグサ
ミヤコグサはマメ科の植物です。黄色の蝶型の花をつけ野原や道端などで見かけることができます。この植物はゲノムサイズが約4億5千万と小さく、また成長が早く交配実験が容易なこと、ダイズなどの他のマメ科の植物と遺伝子の構造や配置が似ているといった優れた特徴を持っています。このためミヤコグサはマメ科植物研究のためのモデル材料として広く利用されています。
農業植物とモデル植物
イネ・ダイズなど農業上重要な植物は、様々な実験上の制約(植物体が大きい、生育が遅い、ゲノムが大きい等)のために、品種改良のために必要な遺伝学的な研究を行うことが容易ではありません。そこで、研究を効果的に進めるため、シロイヌナズナ、ミヤコグサなどのモデル材料が利用されています。これらモデル植物を研究することで得られた知識の多くは農業植物に利用することができます。
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ヒト遺伝子の研究のキーワード

オーダーメイド医療
2003年4月、ヒトゲノムの塩基配列解読が終わり、タンパク質の機能解析(プロテオーム)が盛んに進められています。近い将来、ゲノム研究の進歩に伴い遺伝子の機能を調べて病気の診断や治療に生かすことが期待されています。
「オーダーメイド医療」(または「テーラーメイド医療」)は、個人の遺伝情報をもとに個人の体質や病気をよく知った上で、少しでも個人の状況に応じた医療を提供しようと考えるものです。
例えば、同じ薬を同じ量服用しても、個人によってその効果に差があったり副作用が出たりするのは、遺伝子上に「SNP(スニップ)」(一塩基多型)に代表されるような塩基配列のわずかな個人差と関係があると考えられており、このSNPなどを解析することで、個人の体質にあった健康管理や医薬品の処方を行おうというものです。
ゲノム創薬
ゲノム情報を活用し、医薬品を作る方法を「ゲノム創薬」と言い、従来の経験に従った医薬品開発や偶然発見的な方法を効率的な研究開発へシフトさせるなど新薬の開発現場に大きな影響を与えるものと期待されています。
ゲノム創薬は薬を評価する段階でヒトゲノム情報を活用するため、理論的にはヒトに効きやすい薬ができ、体質による副作用の有無等もゲノム解読により解決できると期待されます。つまり、ガンや糖尿病、高血圧症など複雑な遺伝的要因が関連していることが明らかになっている病気を個人間のゲノム情報の違いとの関連において理解することで、効果的で副作用の少ない医薬品の開発に至れるのではないかと考えられています。
また、ゲノム情報はいままで機能が知られていなかったタンパク質がたくさんあることを教えてくれました。これらの今まで知られていなかった遺伝子から作られるタンパク質の立体構造を解明し、その構造を基にして化合物を設計し、薬を効率よく創ることもゲノム創薬の重要なアプローチです。
長鎖cDNA
タンパク質をつくるための情報を含んだ遺伝情報は、塩基(アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類の核酸塩基分子物質)の配列が担っていますが、この4種の分子は2つがペアとなり塩基対と呼ばれています。DNAの長さは、この塩基対(bp)を単位として示され、その長さによって長鎖・中鎖・短鎖と一般的な表現がなされており、かずさDNA研究所では、比較的時間がかかり、高度な解析技術を要する5,000bp以上の長鎖の解読・解析に注力し、これまでに2,000個を超える未知のヒトcDNAの全塩基配列を決定してきました。cDNAとは、mRNAから逆転写酵素を用いてDNAをコピーしたmRNAに相補的な配列をもつ人工的なDNAであり、遺伝子からできるmRNAの完全なコピーのことです。mRNAは、不安定な分子であるため、研究実験ではより安定なcDNAを用いる場合が多く、このcDNAの解析を通じて、新たな研究が進められています。長鎖cDNAは、大きなタンパク質をコードしている場合が多く、大きなタンパク質をコードする遺伝子の機能解明によって、ガン・脳疾患・生活習慣病等の疾病の克服に寄与することがかずさヒトcDNA解析の目的です。このプロジェクトで得られた成果である遺伝子クローンは世界中で利用されており、その呼び名である「KIAA遺伝子」は正式なヒト遺伝子名として登録されるに至っています。
KIAAクローン
KIAAクローンとは、かずさDNA研究所で発見・作製したcDNAクローンのオリジナルな呼称です。「K」は“かずさ”、「I」は“研究所(Institute)”、「AA」はアルファベットによる整理番号であり、将来的な展開を見据えてA・Aからスタートさせました。
cDNAは、規模の大小に関わらず各研究機関において独自に作製されており、重複するものも少なくありません。かつては、各研究機関において独自の名称をつけていましたが、cDNAクローンの統一的な管理の必要性から、独自の名称は淘汰されていきました。
かずさDNA研究所で作製したcDNAクローンの呼称「KIAA」は、そのクオリティやネームバリューからスタンダードなものとして生き残ってきました。
現在、かずさDNA研究所では、2000個を超えるKIAAを保有し、世界の企業や公的研究機関の研究試料として広く活用されています。
動物とノックアウトマウス(モデル生物)
ヒトゲノム完全解読を機会にヒトとマウスのゲノム配列は90%、ヒトとチンパンジーでは99%同じであることが明らかとなりましたが、動物(マウス、チンパンジー、ヒト)ゲノムの解析も、例えば病気対策や新薬の開発として有用となります。
また、動物は僅かなゲノムの違いでなぜこう違うのか、ヒトと動物のゲノムの違いをDNAレベルで解析することによって、ヒト固有の特性を明らかにすることも可能です。
ネズミの特定の遺伝子をノックアウトして働かなくしたネズミをノックアウトマウスといいます。このノックアウトマウスにどのような影響がでるかを調べることにより、その遺伝子の働きや新薬の効果を調べたりするため、研究機関等で利用されています。
例えば、機能が解明されていないヒトの遺伝子を発見した場合、その遺伝子と相似のマウスの遺伝子を働かなくしたノックアウトマウスを遺伝子操作によりつくります。そして、正常なマウスと比較することによって、異常(違い)が見つかるはずです。そして、その異常の原因はその遺伝子にあると考えられることから、遺伝子機能を解明する糸口となります。このような遺伝子改変したモデル動物は、医薬品開発のためには不可欠の材料となります。
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