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バイオ燃料に関する用語解説 -3-

Q&A

バイオ燃料に関するより詳しい解説です。

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Q 7. エネルギー植物とは?
 Q 7.a.「エネルギー植物」って何ですか?
 Q 7.b.今後どのように研究を進める必要があるのでしょう?
Q 8. バイオ燃料の生産量は国によってどの程度違うのですか?
Q 9. バイオ燃料のエネルギー収支 (生産エネルギー/投入エネルギー) はどれくらいですか?
Q10. 海外のバイオ燃料に対する取り組みはどんなものですか?
Q11. 日本のバイオ燃料に対する取り組みはどんなものですか?
Q12. バイオリファイナリって何ですか?
Q13. 植物原料から石油製品の類似品をつくりだすことはできるのですか?
Q14. バイオ燃料は地球温暖化対策になるのですか?

Q 7. エネルギー植物とは?

Q 7.a. 「エネルギー植物」って何ですか?
A. 石油を代替するエネルギーを抽出できる植物の総称です。 一般に植物は養分を糖質にして蓄えますが、エネルギー植物は石油のような炭化水素をつくりだすため、抽出した液が石油の代わりになります。
 多くのものは茎や枝などの切り口から乳状の液がでる植物で、利用が検討されている種類には、ホルトソウ、アオサンゴ (ミルクブッシュ) 、サイウンカク (以上トウダイグサ科) 、ユーカリ (フトモモ科) などがあります。 ユーカリは生長が早いので、これまで紙の原料として重要視されてきました。 藻類のボツリオコッカスは重油を、シュードコリシスティスは軽油を生み出し、体内に蓄積します。
 この他にも、まだ見つかっていない有用植物がたくさんあると考えられます。

Q 7.b.今後どのように研究を進める必要があるのでしょう?
A. これらの「エネルギー植物」を使った燃料生産プラントの実用化に向けた研究は始まったばかりです。光合成をより効率的に行う細菌や微細藻類の探索と育種、光合成機能を最大限に発揮させるための高密度大量光培養装置の開発、生成される物質を効率よく取り出す方法、残さの処理方法など、解決すべき問題はたくさんあります。

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Q 8.バイオ燃料の生産量は国によってどの程度違うのですか?
A. 2006年の全世界のバイオエタノール生産量はおよそ5,100万kLで、これはガソリン消費の約4%にあたります。
 主な生産国は米国とブラジルであり、この二国で世界の生産量の約7割を占めています。 米国はトウモロコシのデンプンから、ブラジルはサトウキビの茎に含まれているショ糖からバイオエタノールを生産しています。 特に米国ではここ数年でバイオエタノールの生産量が飛躍的に増加しており、現在米国で栽培されているトウモロコシのおよそ20%がバイオエタノール用となっています。
 バイオディーゼルは2005年に約380万kL生産され、EUが全生産量の9割を占めています。 EUのバイオディーゼルの主な原材料はナタネです。東南アジアでは、パーム生産主要国であるインドネシアやマレーシアがパームを原料としたバイオディーゼルの生産を行っています。 また、米国やブラジルもバイオエタノールだけでなく、ダイズを原料としたバイオディーゼル生産にも力を入れ始めています。

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Q 9.バイオ燃料のエネルギー収支 (生産エネルギー/投入エネルギー) はどれくらいですか?
A. エネルギー収支は材料によって大きく違います。
 バイオ燃料の製造は、エネルギー生産である以上、エネルギー収支を1以上にしなければ意味がありません。 米国ミネソタ大の報告によれば、現在のトウモロコシのデンプンからのバイオエタノール生産のエネルギー収支は1.25、ダイズからのバイオディーゼルのエネルギー収支は1.93です。 エネルギー収支に関する議論は米国で活発になされており、様々な報告があります。 米国エネルギー省がまとめた、トウモロコシのデンプンからのバイオエタノール生産エネルギー収支は技術の改良により近年増加傾向にありますが、それでも1.3くらいです。 なお、バガスを燃焼させてエネルギー源とするブラジルのエタノール生産のエネルギー収支は7〜9であり、燃焼材や副産物の有効活用が鍵となると思われます。
 セルロースからエタノールを生産する場合には、余剰物として出てくるリグニンを燃焼エネルギーとして利用するなどの工夫をして、エネルギー収支を上げる必要があります。

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Q 10.海外のバイオ燃料に対する取り組みはどんなものですか?
A. 海外では積極的にバイオ燃料を導入している国が多く、導入量の義務化や中長期的な導入量の設定と合わせて、税制や導入支援策を含む普及拡大のための制度対応が進んでいます。
 米国やEUでは、自国の農林業の振興、エネルギーセキュリティ (中東への依存度の低減) 、温暖化対策として取り組んでいます。
 米国エネルギー省は、バイオ燃料の研究開発費として今後4-5年間で約10.5億ドル(約945億円;1ドル90円換算)」を投入することを発表しており、 バイオ燃料を2012年までに2,840万kL、2017年までに1.3億kLにまで増加させる予定です。 また、2012年までにはイネ科のスイッチグラス、トウモロコシの葉・茎などを原料に用い、ガソリンに対してコスト競争力のあるセルロース系エタノールの実用化を目標に掲げています。
 EUでは欧州委員会のバイオ燃料研究諮問委員会が、輸送用燃料におけるバイオ燃料の割合を2010年までに5.75%に、2020年までに10%以上にすると発表しています。

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Q 11.日本のバイオ燃料に対する取り組みはどんなものですか?
A. 日本政府は、「京都議定書目標達成計画」において、2010年度までにバイオ燃料の利用目標を50万kLとしています。そのため、経産省・農水省・環境省の主導により、全国各地でバイオ燃料の実証事業が行われています。
 バイオエタノールの原料としては、稲わらなどの草本系バイオマス (ソフトバイオマス) や建築廃材・林地残材などの木質系バイオマス (ハードバイオマス) の利用、 さらに耕作放棄地でのエネルギー作物 (飼料米、テンサイなど) の栽培を想定しています。
 しかし、日本では化石燃料とコストの面で競合可能なバイオ燃料導入の実績がまだなく、導入義務化や税制を含む本格的な制度対応までには至っていません。 農水省では2007年より多収米や規格外コムギ、テンサイを原料にした3つのバイオエタノール実証プロジェクトを新潟および北海道で開始し、 従来の小規模プロジェクトに比べ、ひと桁以上大きな規模 (合計3.1万kL/年) のバイオエタノールの生産を目指しています。 ただし、原料の安定供給、価格、飼料との競合に問題があり、今後の課題です。

全国各地におけるバイオエタノール実証事業 *全国各地におけるバイオエタノール実証事業
 クリックすると拡大図が見られます。



  経産省資料より
  経済産業省総合資源エネルギー調査会 報告書

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Q 12.バイオリファイナリって何ですか?
A. 原油を精製し、燃料を含む様々な石油製品を生み出すことをオイルリファイナリと呼びますが、それに対比して、バイオマスを材料として同様な製品を生み出すことを最近ではバイオリファイナリ (Bio-refinery) と呼んでいます。
 バイオ燃料の生産が行われるとともに、大量に消費される石油製品をバイオマス由来の製品に置き換える研究が加速しています。 日本ではバイオ燃料生産にのみ注目が集まり、石油製品を代替する技術開発の議論は低調ですが、米国エネルギー省 (DOE)は、むしろ石油製品代替の方向でバイオ燃料の生産を捉えています。 つまり、これまでの化石資源に依存した産業構造から次第に脱却するための方向を考えているわけです。
 DOEは、バイオ燃料以外にも30種類の低分子化合物を経済的に成り立つバイオリファイナリ原料として選定しています。 これらは植物バイオマスとして生産される高分子 (セルロースなど) を糖などの低分子に分解し、さらに、発酵技術により変換させて作り出すことを前提としており、 デュポン社やカーギル社などの化学会社への研究支援を行っています。

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Q 13.植物原料から石油製品の類似品をつくりだすことはできるのですか?
A. 現在、化粧品などに使われるグリセリンやスプレー類のガス、洗剤に使われる界面活性剤は石油から作られるものがほとんどです。ですから、今後はこれらをバイオマスから効率良く生産する方法を開発しなければなりません。
<プラスチック>
 石油が工業的に採掘されるようになる以前は、糖類の一種であるセルロースに硝酸・硫酸を加えて生成した火薬の一種であるニトロセルロースを加工して合成樹脂 (セルロイド) や人工繊維 (レーヨン) を作っていました。
 現在は、ナフサという原油を精製して得られる成分が使われています。日本に輸入されるナフサの大半はプラスチックの製造に使用されています。
 最近、バイオプラスチックというプラスチックが、主にデンプンや糖の含有量の多いトウモロコシやサトウキビなどから製造されるようになりました。 技術的には木、米、生ゴミ、牛乳等からも製造可能です。バイオプラスチックはもともと植物が大気中の二酸化炭素 (CO2) を固定したデンプンに由来するものであるため、 それを燃焼廃棄しても CO2収支はゼロであると言えます。
 さらに、バイオプラスチックは燃やしても燃焼熱が低くダイオキシン類が発生しません。 バイオプラスチックの中には、微生物によって水と二酸化炭素に分解される「生分解性プラスチック」と呼ばれるものもあります。
<ゴム>
 ゴム樹液に含まれるポリイソプレンは弾力を生み出す成分ですが、このポリイソプレンは、炭化水素であるイソプレンが樹木内で重合されることによって生成される高分子です。 第一次世界大戦後、増大するゴム需要を賄う目的で、同じように炭化水素を含む鉱物である石油や石炭からゴムを合成する方法が開発されました。
 現在、天然ゴムの原料であるラテックスがアレルギーを引き起こす物質を含むことから、合成ゴムの必要性が高まっています。 そのため、生産性の向上とともに、品種改良によるアレルギーを起こさない天然ゴムの開発がもとめられています。

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Q 14.バイオ燃料は地球温暖化対策になるのですか?
A. 地球の温暖化は、二酸化炭素を始めとする「温室効果ガス」の増加が主要因となっていることが報告されています。
 化石燃料の大量使用により二酸化炭素濃度は年々上昇しており、京都議定書にもあるように先進各国で削減目標が定められています。 バイオ燃料の原料となる植物は光合成により二酸化炭素を吸収するため温暖化防止に役立つと考えられますが、 植物を育てるには、肥料や農薬の生産と使用、農機具の使用、収穫や輸送など様々な面でエネルギーを消費し、二酸化炭素を排出します。
 したがって総合的に検討することが必要です。

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